毎年正月を過ぎる頃になると、その年に社会人となる新成人たちを祝う成人式に関するニュースが、良くも悪くもメディア上を賑わせることとなるが、こうした成人式については、思いのほか、その土地土地に根ざした地域色が色濃く出るようだ。
「なにせ大人になるための大切な儀式だからね。そりゃあもう、気合が入るんだよ、大人たちも」
かつて西日本のとある地域で行われていたという、一風変わった成人の儀式についてそう語るのは、当地で現在も梨農家を営んでいるという井沢敬三さん(仮名・78)。伊沢さんの話によると、その昔行われていたという当地における“成人の儀”は、全国的に見ても実に珍しい内容のものであったのだという。
「あのね、今の人らは知らないかもわからんけれども、昔からね、女の処女は珍重されるのに、女を知らない男っていうのは忌み嫌われていたわけ。半人前なわけだから。だからね、このあたりじゃ、成人になるまで女を知らない男たちにね、“ベテラン”の女たちがいろいろと手ほどきをするっていう習慣があったのよ」
かの人気ハードボイルド作家・北方謙三は、その昔、某人気雑誌の人生相談コーナーで、読者であるチェリーボーイたちから性の悩みが寄せられると、「とりあえずソープへ行け」と語っていたものであるが、そうした“プロの女性”などいようはずもない寒村である当地においては、
成人を迎える童貞青年たちに対して、近隣の人妻たちが筆おろしを行うという、なんとも珍しい習慣が存在していたのだという。
「まあね、あくまで“形だけ”のものだからね、パパっと手短に済ませるのだけれども、なかにはそういうウブな男たちにイロハを教えたことで、逆に盛り上がっちゃって、あらぬ道へと奔ってしまう奥さんなんかもいてね。けど、そういうことも含めて、ある程度までは黙認していたわけだから、今の時代に比べると、かなり大らかなものだったんじゃないかな」
あくまで“地域での役割”として、童貞青年たちの筆おろしを行っていたにもかかわらず、逆に入れあげて、あわや家庭崩壊というレベルまで、不倫関係に陥ることも少なくなかったという当地の人妻たち。たしかに井沢さんが言うように、「おおらかだ」と言ってしまえばそれまでだが、
いわゆる“草食系男子”が増え、童貞率が高まっているとされる昨今の我々からすれば、当地におけるこの成人の通過儀礼、良くも悪くも、にわかに信じがたい奇習であると言えそうだ。
(取材・文/戸叶和男)
まぁトカナなんですけどね
https://tocana.jp/2019/02/post_19541_entry_2.html