「セ◯クスが体にいいというデータは山ほどあるのですが、マスターベーションに関しては詳細な報告がなかったんです」
こう話すのは、独協医科大埼玉医療センター泌尿器科の小堀善友医師。男性不妊症の診断・治療を専門とする。
小堀医師は昨年、本邦初となるマスターベーションに関する調査を実施。対象は15~64歳の日本人男性2392人。
「マスターベーション頻度1位は神奈川県の週3・77回、ワーストは徳島県の週1.95回」「マスターベーション時の姿勢1位は《椅子に座る》。次いで、あおむけ、横寝、あぐら、うつぶせの順」など、さまざまな実態があらわになったが、小堀医師が驚いた調査結果がこれ。
「15~39歳の10%が、マスターベーションの方法として、床にペニスを押し付けて射精する『床オナ』を挙げたのです。『力を込めて握る』も8%。予想以上の数です」
小堀医師の専門は、男性不妊症だ。原因の13%は「性機能障害」で、このうち6%が勃起不全、7%がセ◯クスの時に女性の膣の中で射精ができない膣内射精障害。「マスターベーションではできるのだけど」という場合も、膣内でできなければ膣内射精障害になる。
「年間100人ほどの膣内射精障害の患者さんを診ていますが、半分は不適切なマスターベーションが原因。その典型が床オナです」
■すぐには変えられない習慣
床オナと、手でペニスを上下にしごく“正しいマスターベーション”とは、射精に至る流れが違う。それはまるで、手で食事をするか、足で食事をするかくらい大きな隔たりがあるという。
「床オナは勃起せずに強く圧をかけて射精する。刺激↓勃起↓射精という本来のマスターベーションとは全く違う過程で快楽を得る。長い間、足で食べていた人が、手で食べようとしてもうまくいかないのと同じくらい、すぐには変えられない習慣です」
それこそ薬を使えば解決するEDよりはるかに対策が難しい。膣内射精障害で来院した場合、小堀医師は女性パートナーにも来てもらい地道に解決策を探るが、必ずしもうまくいくとは限らない。
着目すべきは、今回の調査で対象になったのは、膣内射精障害で通院している人ではなく、一般の人だということ。
「それなのに、床オナが10%。これが意味するのは、膣内射精障害の予備群がかなりの数でいるということです」
小堀医師が行った別の調査では、20~40代で「ほぼ毎回膣内に射精できない」人が3.15%。これを同年代の人口に当てはめると、74.5万人。「半分程度、射精できない」人を加えると、200万人を軽く超える。
「患者さんは、子づくりをきっかけに射精の悩みを相談に来ます。しかしこれで膣内射精障害とカウントされる数は氷山の一角で、かなり多くの人が膣内射精障害を抱えていると考えられます」
この話を20代を含む女性10人にすると、一様に「分かる分かる」。「マジで!?」という反応は皆無だったことも付け加えたい。
床は固すぎるから初心者は抱き枕か
掛け布団折りたたんで棒にしたのに跨るのが良いよ