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2012年にデビューしたAV女優の紗倉まなさんは、コラムや小説の執筆など幅広く活躍中です。 男性の欲望を一身に受け止める立場から、男女の性のギャップについて語ってもらいました。
■「サーカスのような気分で…」
――AVのプレーを再現しようとする男性に、女性から違和感を訴える声が届いています。
AVは、セ◯クスの参考にしてはいけないものです。自分が楽しむものと、目の前の相手を喜ばせるものとは違います。
私は、無理な体位を始めとする演出は、サーカスのような気分で演じています。これをプライベートで挑戦する人、ヤ バイですよ。多くの男性は「気持ちいいから潮を吹く」と勘違いしているようですが、潮吹きと気持ちよさは、女性にと ってはまったくの別物。そう見えるように演出してきたAVにも責任があると思います。
女性の顔に精液をかける演出も、実は裏では腫れたりかぶれたりしないように、洗い流して抗菌目薬を打つなど入念な ケアをします。これを実際にやられたら、「えー!」って驚くし、受け入れがたいです。私のことをどう思っているんだ ろう、私じゃなくて誰でもいいじゃん、と悲しくて冷めてしまうと思います。
AVと実際のセ◯クスは、仕事とプライベートのように切り離して考えてほしい。自分が楽しむものと、目の前の相手を 喜ばせるものは別だと心得てほしい。
女性みたいに声が出ちゃう男性、私はかわいいなと思うんですけど。撮影現場ではよっぽどドMな役柄でもない限り、男 性は声を出さない。「これが普通」と、男性を枠に縛りつけているのだとしたら、かわいそうな気もしますね。有名男優さ んの動きをコピーする必要はないのに。
そういえば、女優さんのあえぎ声も甲高いのがスタンダードになっています。私も過去に「トドみたい」と言われて直し たことも(笑)。AVを見た女の子に「ああいう声を出さなきゃいけないのかな」と思わせているのだとしたら、あるがま
までいいんだよ、と言いたいですね。
■「女性ももっと貪欲に」
――女性は、とかくセ◯クスで受け身になりがちです。
女性って、男性よりも圧倒的に演者ですよね。声を出すのも、自分が興奮しているからというより、彼がそうすれば欲情す るとわかってやっている。相手の要望を受け入れてあげたいと思うのも優しさで、それ自体が悪いことじゃない。でもその分、 女性ももっと貪欲(どんよく)になっていいと思います。
私は「行為中に元カノの名前を呼んでほしい」とお願いしたことがあります。ちょっとした嫉妬心や、私の無理な求めに応じ てくれる彼への感謝とか、いろんな感情がごちゃ混ぜになったセ◯クスの方が燃えると思ったから。もちろん、毎回毎回は嫌で すよ!
実際、もっとこうしてほしいのにと不満が残ることは多いです。でもそう思えるのは、セ◯クスに対して希望を捨てていない、 あきらめていない証拠ではないでしょうか。
私はAV女優への偏見を打ち崩したいと、アイスピックで細々と削り取るような作業を続けています。壁を崩すことが目的でし たが、最近はこつこつとほじくる過程そのものを楽しんでいるのかも、と考えるようになりました。セ◯クスも似た側面がある
ように思います。
しょせん赤の他人、性別も違う。壁を完全になくせるはずはない。でも、乗り越えようとするプロセスにあるとお互いが自覚で きたら、少し気が楽になると思うんです。
正直、私の気持ちに合わせてくれる男の人は、本当に少ない。仕事柄か、プライベートでもむちゃな要求をされたり、反対に相 手が「マグロ」になってしまったり……といった話が女優同士で話題になります。でも、自分の思いを封じ込めてあきらめるより は、じゃんじゃん言って、結果的に「この人は無理だ」とあきらめる方が、同じあきらめでもスッキリするんじゃないでしょうか。
――どういう風に要望を伝えていますか
怒られているとは思われないように伝えます。心を閉ざされたら本末転倒になりかねない。優しく甘えてみるといいと思います。
要望を伝えたくても、そもそも女性は自身の性のスイッチ自体を見つけていない人も多いですよね。方法は二つあって、一つは探 究心を持っていろいろ試すこと、もう一つは良いパートナーに出会うこと。私は前者です。実感としては、パートナーに恵まれるの は奇跡に近い。それよりは主体的に性に向き合うのが近道でしょう。
AVが女性の性的探究心に応える材料になってほしい。いまのAVはあまりに男性向けばかり。視聴者が男女半々になったら、今 とはまるで違う作品になるでしょう。私もそんな作品の後押しをしたいです。
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【略歴】 さくら・まな 1993年生まれ。高等専門学校在学中にAVデビュー。初めての小説「最低。」(KADOKAWA)が瀬 々敬久監督により映画化され、25日から全国で順次公開。3月には初の長編小説「凹凸」(KADOKAWA)を発表。他の著書に 「高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職」(宝島社)、共著に「女のコのためのもっともっと愛されるSEX」(双葉社)。