女勇者『ごほっごほっ』
看護師A『大丈夫ですか、勇者さん。ほら、うろうろせんと、ベットでおとなしくしててください』
女勇者『すまないねえ…、昔は冒険して魔王退治に頑張ったりしたんだけどねえ…、
ところで今日の昼ごはんはまだ?』
看護師A『何言ってるんですか、さっき食べたじゃないですか』
………
医者A『204号室のおばあちゃん、残念だがもう長くないだろうな』
医者B『仕方ありません、だってもう齢90を超えてますからね、大往生ですよ』
魔王(
)「え?」
側近「はいこれが偵察の悪魔の目玉で撮った最新の勇者の映像です」
側近「まあ、もう見ての通りしわくちゃのおばあちゃんで、数年前から病院で寝たきりです。医者の見立てではもうじき死にますね」
魔王(
)「え、ちょいちょい」
側近「え?」
魔王(
)「勇者って…、なんでこんなに老けてんの…?こないだまですっごい若い子じゃなかった?」
側近「は?」
魔王(
)「はああ!?勘違いなんてするわけないでしょうがっ!私がこの女と何回戦ってきたと思ってんのっ!
私に何回も挑んできたこの女の顔を忘れるわけないわっ」
魔王(
)「この間戦ったときなんか、コイツ、私の腕を切り落としたのよっ!
絶対許さないわっ!治すのにどれだけ苦労したと…」
側近「いや、それ60年くらい前の話なんですけど」
魔王(
)「え?」
何回も戦ってんだし、それくらいちゃんと把握してくれないと」
魔王(
)「え、うそ…、私、コイツとは通算で100回くらいは戦ってるはずだけど…、それって」
側近「ああ、勇者が大体18歳~60歳くらいの間の話ですね。大体、30年~70年くらい前」
魔王(
)「最近じゃん」
側近「我々にとってはそうですけど。人間は違いますから」
魔王(
)「ええ…、そういえば一番最後に戦ったとき、若干あったかも。………白髪が…」
側近「まあ、それも30年近く前なんですけど」
魔王(
)「最近じゃん」
側近「もうええっちゅうに」
)「ええ…うそぉ…、人間って老けるの早すぎでしょ。 なにコイツ、よぼよぼのおばあさんになってんのよ…、若い時はあんなに美人で強くて………、ん?」
魔王(
)「あれ…けど……、あれ?そういえば、こいつ、昔は男じゃなかったっけ?そんな記憶あるけど」
側近「ええ……なに言ってんですか魔王様。それたぶん先代の勇者とかと勘違いしてません?」
魔王(
)「えっ?」
側近「え、まじですか。ひょっとして覚えてないんですか?
魔王様が魔王として赴任されてから、勇者も何代か変わってますからね?」
魔王(
)「えっ」
側近「人間は寿命早いですからね、子孫に受け継がれてますから、そこ気を付けてもらわんと」
魔王(
)「ええ…、知らない間に勇者変わってたんだ気づかんかった」
側近「ええ…」
)「けどわたし勇者と言ったら、この女しか印象にないわ…」
側近「魔王様に印象に残らなかった代の勇者はかわいそうですねなんか」
側近「まあ、確かにこの女勇者は他の代の勇者に比べてもダントツで強いのは間違いないでしょう。
レベル1550ですし……、歴代最強の勇者かも」
側近「魔王様も何回かこの女勇者にはやられかけましたよね。
腕切り落とされたとき部屋にこもって痛い痛いって泣きわめいてて、くっそダサかったのよく覚えてます」
魔王(
)「はあああ!な、泣いてないしっ!実際に見たみたいにいわないでっ」
側近「うちの幹部も何度この勇者にレベル上げがてら倒されたことか……」
魔王(
)「え?」
側近「四天王のマギラスさんなんかもう3000回くらい勇者にぶっ殺されてますからね。他の
幹部も1000回は殺されてますし。ほんと、蘇生するのに大変でしたよ」
魔王(
)「何回蘇生されてんだアイツら…、それもう律儀に蘇生しなくていいわよ、
経験値にされるだけなんだし」
魔王(
)「え?」
側近「このババア勇者は、魔王討伐に人生をかけすぎて、結婚することも、子供をつくることもしてません。
その熱意に途中からパーティの仲間さえもついていけなくなって、今はもう仲間もいませんし。もう跡を継ぐ人間もいません」
魔王(
)「ふ…ふーんそう」
側近「邪魔者はいなくなりますし、さっそく幹部あつめて人間界の制圧に向けてチャキチャキ計画を練って行きましょう」
魔王(
)「そうね、うん」
魔王(
)「……くくく……、勇者のやつ、私をここまで追い詰めておきながらあっけない幕切れだったわね……、
まあ人間として生まれたことをあの世で後悔すればいいわ、はっ」
側近「…おうさま、魔王様っ」
魔王(
)「……ふぇ?」
側近「人間界の制圧の件、どの大陸から攻めて行こうかってみんなで話し合ってたんですけど……」
魔王(
)「え、ああ……うん。どーだろうね、どうだろ」
魔王(
)「どこでもいいんじゃない?」
側近「………」
側近「(こいつ……、あからさまに五月病になってる……。ライバル視してた勇者が死にかけるってわかったからかな…?)」
各大陸から四天王も集まってるんですから、なにかご指示を」
魔王(
)「え…?」
四天王
マギラス(レベル20)「ふぉっふぉ…、しかし魔王様のお気持ちはわかります。私とて魔王様と同じ気持ち。
あの女勇者は必ずこの東の大陸の支配者、マギラスが地獄に落とすと心に決めていましたからね。残念でなりません」
※トータル勇者敗北回数 3033回
ゴリアテ(レベル35)「がはは、しっかし90年やそこら生きた程度で風前の灯火とは…、糞雑魚だったんだなっ
勇者というのはっ、あの女はこのゴリアテが北の大陸の湖の底に沈めると心に決めていたんだがなっ!がはは」
※敗北回数2015回
レバニラ(レベル55)「ふふ……、勇者といえ、老衰で死ぬとはあっけない…、われらと死闘を繰り広げた
人間とは思えんな…西の大陸を墓場にしてやろうとおもったのに実にくだらん」
※敗北回数1800回
アシュタロ(レベル458)「はっ、昔っからレベルの低い雑魚四天王がピーピーうるせえんだよ。
まともに会議しねーなら南の大陸に帰るぞ俺は。いろいろ忙しいんだからなっ!」
※敗北回数433回
アシュタロ「(そう…、あの勇者がいなくなれば、おれの敵となるはこの魔王一人だけ!
必ずやこの魔王の寝首をかき、次期魔王の座は俺のものだ…)」
アシュタロ「(しかも魔王のやつ、今はやる気がなくなり力を落としている…、ヤるなら今かもな…、くく)」
魔王(
)(レベル1600)「ああうん……、そうね」
※敗北回数0回
)「まあ、人間界侵略はもうちょっと待ちましょう、 だって、あの勇者……、元気になってまた私たちの邪魔してくるかもしれんし」
側近「いやいやいや、魔王様、それはないですって。勇者はもう寿命で」
魔王(
)「なに言ってんのよ、あの勇者…、あんなに強かったのに、そう簡単にくたばるわけないでしょっ!
ちょ、側近、悪魔の目玉!映して、勇者の映像っ!はよ、はよして」
側近「勇者の映像って、3日前にみたばっかじゃないですか」
魔王(
)「もう3日もたったのよっ、元気になってるかもしれないじゃないっ!」
側近「ええ…、こないだまで数十年やそこらを最近だって言ってた人が」
魔王(
)「いいからっ!」
女勇者『しゅこーしゅこー』
医者A『昨日から昏睡状態か…、おそらくもう目覚めることはないだろう』
医者B『残念だがあと数日の命か』
魔王(
)「な…っ」
側近「あらー、こりゃもう駄目ですね勇者、……ん?」
アシュタロ「……はあ、はあ…うう…くそ…、あの女あ……」ガタガタ
レバニラ「ううっ…やばい腹が痛くて…、便意が…」ブリッ
ゴリアテ「ふぇええ…、勇者…勇者だああ…ひいいいいいい…お助けええ」
マギラス「ぶぉおええええええええええええええ!!」ビチャビチャ
側近「ええ…、四天王のみなさん……、寝たきりの勇者の映像みただけでそんな怖いん?恐怖刻まれとるやん」
)「………」
側近「魔王様??」
魔王(
)「ごめん…ちょ、わたし、ちょっと気分悪くなってきたから…、今日のとこは、みんなで話し合っとって」
側近「ちょ、魔王様っ!?」
魔王(
)「大丈夫っ、明日の会議には出るからっ、ほんとごめんっ」
側近「ええ……?」
レバニラ「どうするんだ、貴様のゲロのせいでとても会議どころじゃないじゃないか、
そこまで勇者のことが怖いのかなさけない」
マギラス「ふぉっふぉ、脱糞した貴方にいわれなくはないですな、あまりの臭さに倒れそうですわ」
ゴリアテ「がっはっは!ゆゆゆ勇者の映像をみみ見ただけで2人ともなな情けないぞっ!」ガクガクガク
アシュタロ「ふっ、なんだ魔王のやつ…、会議放棄とは、そこまで気力が落ちていたか…
やはり殺るなら今かもな…」
アシュタロ「はあ、はあ…けど、急に勇者の映像映されてびっくりした」ボソッ
側近「(会議つったって魔王様抜きでこの連中だけじゃあなあ……)」
側近「(しかたない、今日の会議は中止にして、明日の会議に魔王様が来るのを待つか)」
側近「それでは、人間界への侵攻は、南の大陸から行くことになりましたけど……、って、魔王様、なにやってるんですか?」
魔王(
)「え……、なにが…?」
ぐちゃ…ぐちゃ…
側近「な、なにやってんすか魔王様…、なに紙グチャグチャにして遊んでんですか…?」
魔王(
)「え……、いやあの……これは」
魔王(
)「勇者へのお見舞いに千羽鶴折ろうと思って……」
側近「あ……?」
側近「って、いやいやいやいや、違うわその前に」
側近「勇者のお見舞いに行くつもりなんですか!?あいて我々の敵ですよ!??」
魔王(
)「うん……、まあ……」
部下の魔物たちにみられたら魔王軍の指揮にかかわりますっ!」
四天王「………」
側近「ほ、ほらっ、四天王のみんなも見てるんですよっ!もっとシャキっとしてもらわんと」
アシュタロ「はは…」
魔王(
)「え?」
アシュタロ「無様だな魔王…、情けない奴、勇者が瀕死になったことで
これほどまでにやる気をなくしていたとはっ!ははっ!」にやり
アシュタロ「そして感じるぞっ!やる気の低下とともに魔王っ!貴様の力も落ちていることがなあ!」
側近「あ、アシュタロさん…、ま、まさか貴方…!魔王様に」
アシュタロ「……ふん、ツルひとつまともに折れないだなんて魔王失格だな。
ちっ、しかたないから俺も手伝ってやるよ」
側近「ええ…?」
)「ア、アっくん!ありがとう!昔から近所でよく突っかかってくる生意気 なガキだと思ってたけど、ホントはやさしい子だって、私わかってたよっ」
アシュタロ「は、はああ!?ち、ちげーし、そんなんじゃねーし、
子ども扱いしないでくれるっ?昔からそういうとこムカつくんだよっ、調子にのってんじゃ」
魔王(
)「ひそかに私に反旗を翻す準備してる知ってたから、近いうちボコボコにしよう
と思ってたけど許してあげるね、ほんとにありがとうっ」
アシュタロ「!!??」
マギラス「ふぉふぉ、こうなっては仕方ありませんな、力になりましょうぞ」
ゴリアテ「がっはっは、我々も手伝いますぜ、魔王様。このゴリアテの力にかかれば
瞬殺だからな」
レバニラ「ふっ、我々四天王が手を貸せば千羽鶴を作ることなど造作もないからな」
魔王(
)「み、みんなも…、ありがとう、ありがとうね、ありがとう」
アシュタロ「ち、世話の焼ける魔王だぜっ、もっとシャキっとしやがれっ」
がやがや……
側近「ええ……?なにこれ…なんなんこれ…ちょっと展開がよくわかんないんだけど…」
ゴリアテ「くそ…、くそ…、俺の腕力をもってしても…、何度やってもまったくツルの形にならん…ぐうう!」
マギラス「折り紙というのはなんと難しいのだ…、何回もやり直して紙が折り目だらけに…、ああ…なんという…」
レバニラ「ちいいいっ、わたしの騎士としてのキャリアをもってしても、なかなかキレイに折れぬとは…
なんという難易度の高い……!」
アシュタロ「はっ、てめーらほんと使えねーなっ、け、けど俺の折ったツル
もなんかよく見るやつとちょっとイマイチのような…、ちいっ…っていうか魔王っ」
アシュタロ「てめーが一番へたくそじゃねーかっ、なんだそのグチャグチャなのっ、どこまで不器用なんだよっ!」
魔王(
)「うう……、だ、だってこれ、めっちゃ難しいし…、ああ、どうしよう…一刻も早く
1000羽折らないとだめなのに…、まだ、イマイチな出来栄えなのが50羽くらいしかない…」
側近「ええ……」
マギラス「ああ…なんという…」
レバニラ「くそお、騎士道が…、騎士道がああ!」
アシュタロ「お、落ち着けてめーらっ、気が散るんだよっ!」
魔王(
)「うう…、どうしよう、どうしよう……」
アシュタロ「ま、魔王がうろたえてんじゃねーよっ!お、俺がなんとかしてやるっ!!」
側近「………」
魔王(
)「え?」
側近「その………ツルを折るのはちょっとしたコツがあってですね」
魔王(
)「え?」
側近「まず最初に折り目をこうしてつけるのがコツで…、それでこうして…」
ゴリアテ「なんだと、側近、貴様うまいな」
レバニラ「手際もよいな、くっ、伊達に歴代魔王様の側近をやっていないということか」
マギラス「ここまでの力を隠し持っていたとは意外ですな」
アシュタロ「ちいっ、コイツ…やるな」
側近「で、しっかり目に折り目をつけると仕上がりがキレイになりますけど、一応、わかりました?」
魔王(
)「うん……、うん……」
………
………
魔王(
)「や、やった……」
魔王(
)「やったわ、とうとう千羽鶴達成だわっ!」
マギラス「ふぉっふぉ、ようやく達成できましたな。しかし3日間連続徹夜はいかに魔族といえど応えますな」
ゴリアテ「がはは、千羽鶴など糞雑魚だったな、われらの勝利だ、がはは」
レバニラ「貴様は30羽程度しか貢献してないだろう、偉そうに、一番作ったのは私だ」
アシュタロ「いや明らかに俺だろっ、俺が一番頑張っただろうがっ」
魔王(
)「みんなありがとうっ、それに側近もっ!アドバイスくれてありがとねっ」
側近「ああ…いいっすよもう…」
魔王(
)「あ、こうしちゃいられないわっ、それより勇者よっ、はやくこれ持ってお見舞いに
いかないとっ!側近っ、今の勇者の容態はどうなってるのっ!?」
側近「え?ああ、そういえばどうだろ、悪魔の目玉の最新映像はっと」
医者A『心拍数0っと……呼びかけても返事もありません。どうやらただの屍ですね』
医者B『残念ながらご臨終ですね』
医者C『よし、土葬の用意しましょうか。身寄りもおらず引き取りてもいませんし、我々が手配しましょう』
側近「あちゃー」
魔王(
)「」
レバニラ「側近貴様……、そういうのはリアルタイムで映像を配信すべきであろうがっ」
アシュタロ「そういうとこだぞお前っ、ほんとそういうとこだぞっ!」
側近「ええ…、はい、すいません」
魔王(
)「………」
側近「あ、あのー、魔王様も……、いや、ほんとすいませんでした、せっかく千羽鶴つくったのに」
魔王(
)「………」
側近「あ、あの……、魔王…さま?」
魔王(
)「わたし、コレ持ってちょっと行ってくる」
側近「え……行くって……どこに?」
………
女勇者「あら……?確か私は病室にいたはず…?それなのにここはどこかしら?雲の上のような…、
それに目の前の光輝く扉は?」
女勇者「ああ、そうか……、わかったわ、私ももう現世を離れ、
この先に向かわないといけないのね」
女勇者「……行かないと」
「待ちなさいっ!!」
女勇者「え?」
女勇者「(魔王退治に明け暮れ、友もおらず、子も夫もいない私に誰が…?
…けどなんだか聞き覚えのある、懐かしい声……誰だったかしら?)」くるっ
魔王(
)「はあ、はあ…、待ちなさい…」
女勇者「ええ……?」
魔王(
)「はっ、もうヨボヨボで痴呆症って聞いてたけどさすがに私のことは覚えていたようねっ!
さすがは私の宿敵だわっ!」
女勇者「ど、どうしてここにっ!?」
魔王(
)「これを持ってきたのよっ、千羽鶴っ!」
女勇者「え…?」
魔王(
)「よくわかんないけど人間はこれを見舞いに持ってったら
元気になるもんなんでしょっ!?さあ、受け取りなさいっ!」
女勇者「ええ…?どうしたの貴方……、まあ、それじゃ一応受け取るけれども」
魔王(
)「よしっ、受け取ったわね、これで元気になったわねっ!さあ、とっとと人間界に
戻りなさいっ、どーせまた私の城に単身で乗り込んでくるんでしょ!?
魔王(
)「ははっ、まあ仕方ないわ、アンタとの決着はまだついちゃいないしねっ!」
魔王(
)「くくく…、それとも今ここで」
女勇者「………」
魔王(
)「はあ!?何言ってんのよ!アンタが私の腕を引きちぎった恨み、私はまだ晴らしてないわっ!」
女勇者「そうね、私も貴方だってボコボコにして討伐する夢を達成しないと死んでも死にきれない。けど、ダメなの」
女勇者「わたしはもう、死んだんだから」
魔王(
)「……っ、ふ、ふざけるなっ、ふざけんなっ!だ、だったらアンタこれからすぐ魔族に転生しなさいっっ!
私が魔力を注入すればできるかもっ、そうすれば何千年だって若いままでいられるし、私ともずっと戦うことが」
女勇者「ふざけるなっ!」
女勇者「私は正当なる勇者の血を引くもの……、魔族になるなんてもってのほかだ。それに、いかなることが
あっても魔族からの施しはうけない」
魔王(
)「えええ…、じゃ、じゃあ千羽鶴は…?それ、もらったじゃん」
女勇者「これば別口だ」
魔王(
)「ええ…」
)「ええ……、そんなん…そんなん…ぐす…ぐす…」
女勇者「………ええ…なに泣いてんのよ…私は敵だぞ」
魔王(
)「はあ、な、泣いてないしバカにしないで…ひぐ…えぐ…けど、なんか……」
魔王(
)「あんたがいなくなるの……さみしくて」
女勇者「……」
奴が、当の魔王だなんて」
魔王(
)「いやだから泣いてなんか」
女勇者「心配することはない、魔王よ」
魔王(
)「え?」
女勇者「齢80を超え出したあたりから病床に伏し、ずっとベットの上で過ごしてきた私だが、
その間、ずっと現世の神々に祈り続けてきたんだ」
女勇者「誰か私の遺志を継ぎ、魔王討伐を果たす新しい勇者が現れることをな」
魔王(
)「ええ、だってあんた、子供もいないし、勇者の血を引くものはアンタひとりだって」
女勇者「今時、家業を継ぐのに血がどうのとか細かいことはもういいの。
要はアンタをボコボコにできれば私の気持ちはスッととするんだから」
魔王(
)「え、ええ……、適当」
おいたから、近い将来、必ずや人間界に貴方の命をつけ狙う勇者が再び現れることでしょう。
せいぜい夜道には気をつけなさい」
魔王(
)「いやなんだその悪役みたいなセリフっ!!?」
女勇者「あと、あんたの部下弱すぎで話にならんかったな。四天王変えたほうがいいんじゃない?雑魚すぎ」
魔王(
)「ぐっ……、そ、それは言い返せないけどっ……あ、ちょ、待ちなさいよっ」
女勇者「駄目よ、もう行かないと。千羽鶴ありがとう。ありがたく頂戴しておこう」
女勇者「それと………、さようなら、魔王」
魔王(
)「あ……」
魔王(
)「さよなら、勇者……」
……
側近「……おうさま、魔王様」
魔王(
)「ふぁ?」
側近「いやふぁ?じゃないですよ、ババア勇者もくたばったんだから、とっとと人間界の侵略はじめましょうよ」
魔王(
)「ええ……、いいじゃない。勇者が死んでから日も浅いし。そういう大仕事は、もう少し休んでからしましょうよ」
側近「いやもう、あれからもう20年たってますけど……」
魔王(
)「最近じゃん」
側近「それはもういいっちゅうに」
魔王(
)「っさいなー、別にいいやん。もうちょっと待ちなさいよ」オリオリ
側近「何暇つぶしにツル折ってんですか、しかも私よりもうまくなって、イライラするはい没収っ」
魔王(
)「ああんっ」
側近「それに、もうちょっと待つって…、なんのことですか?魔王様、もしかして私に何か隠してることあります?」
魔王(
)「んー、別に?とくにはないけど」
側近「怪しいな……、ん?なんだ、部下から連絡メールが…」
側近「……!!ま、魔王さまっ!た、大変ですっ」
魔王(
)「え?どしたん?」
側近「ひ、東の大陸に…ゆ、勇者を名乗る一行が現れたとの情報ですっ」
魔王(
)「……っ、ふ、ふーんマジで?けど、そんなの勇者名乗ってるだけで
どうせ大した連中じゃないんじゃないのぉ?」
くっそ強いらしいですっ、それに、異世界から来たとかなんとか良くわからないことを言っているという情報も…うん?」
側近「ちょ、ちょっと待ってください?北や西、南の大陸とか、各地にも勇者と名乗る一行がぞくぞく現れたとの情報ですっ!
伝説の賢者に育てられた賢者の孫みたいな奴とか、元村人なのにスライムを倒しつづけて超強くなった奴とか…なんだこの設定!?」
側近「なんか、『なんでもあり』、みたいな連中が急に勇者を名乗って現れはじめましたっ!しかも全員、滅茶苦茶強いとの情報っ!なんだこれどーいうことだっ!」
魔王(
)「ぷっ」
魔王(
)「アイツ祈りすぎだろオイ」ボソッ
側近「え?魔王様、何か言いました?」
魔王(
)「え?んーん?べつにー」
魔王(
)「当然、全員ぶち殺すに決まってんでしょっ。各大陸に現れた勇者の
情報を速やかに四天王に配信しなさいっ、さあ、やるわよっ」
側近「は、はい、わかりました、あれ、けどアシュタロさんを除く四天王はすでに勇者を名乗る一人に倒されて」
魔王(
)「はっや!どんだけ弱いんだアイツら!じゃあ蘇生して早くっ!何回でも蘇生して働かせて!
それから、四天王全員に新しい勇者一派に対応できるようにもっと実力つけるようにいって、早くっ!」
側近「は、はあ」
)「さああ、面白くなってきたわね、やるわよー、全員ぶちのめすぞおっ!」うずうず
側近「……なんだか楽しそうですね、魔王様?」
魔王(
)「え?何が、別に?人間界の侵略を阻むものが現れてすっごいイラついてるけど?」
側近「いやそんなふうに全然みえませんけど。……ひょっとして魔王様が待ってたのって」
魔王(
)「さあ、やるわよ勇者討伐開始よ!!、ほら、とっとと指令出して、はよ、はよしてって、ほらっ」
側近「ああもう…はいはい…、わかりましたよ」
おしまい

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