女性に限られてきた「強姦(ごうかん)罪」が「強制性交等罪」になり、被害の内容が広く捉えられるためだ。
しかし男性被害者は「見えない存在」とされてきただけに、課題は多い。どんな制度や支援が必要なのか。 2回に分けて考える。
2015年夏。関西にある大学のカウンセリングルームで、4年生の小田雅人さん(22)=仮名=は精神科医に切り出した。「実は、親友に犯されて…」
加害者の男性は、12年来の親友だった。被害の約1年前、同性愛者だと打ち明けられた。
男性は、小田さんが女性と旅行したことをとがめたり、体を触ったりするようになる。
小田さんが抗議すると、馬乗りで顔を殴られ、口を使った性行為を強要された。
「嫌だ」と言うたびにペナルティーのように殴られた。
しばらくして男性の謝罪を受け入れると「誕生日のお祝いをさせて」と食事に誘われた。
その日、肛門性交による被害に遭う。殴られた痛みと恐怖がよみがえり、抵抗できなかった。
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翌朝、泣きながら帰宅し、熱を出した。その夜、遺書を書いた。
九州に住む家族には相談できない。消えてしまいたいという絶望の中、小田さんはツイッターで心情を吐露した。 気付いた知人が、性被害者に医療や法的な情報を提供する「ワンストップ支援センター」があることを教えてくれた。
匿名で相談のメールを送った。返信に書かれた電話番号にかけると、初めは優しかった女性相談員の声が、小田さんの低い声を聞いた瞬間、冷たくなった。「ご用件は何ですか」
経緯を話すと「うちではどうにもできません」と警察署への相談を促された。
警察署に電話すると、被害状況を確認するため「診断書を取って」と総合病院の電話番号を伝えられた。
病院に電話し「性被害に遭ったので診断書がいる」と伝えると、男性なのに産婦人科につながれ、断られた。たらい回しにされるSOS。もうやめよう、と思った。
友人の強い勧めで大学のカウンセリングを受けたのは、被害から5日後のことだった。
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