自サツを図ろうとした少女を踏切内から助け出したとして、兵庫県警明石署は県の善行表彰「のじぎく賞」を明石商業高校3年の小池太陽さん(17)に贈った。「とっさに体が動いた。当たり前のことをしただけ」と小池さんは話した。
小池さんは今月11日午後10時半ごろ、友人と食事をした帰りにJR大久保駅(明石市大久保町)東側の踏切を自転車で通りかかった。
そこですれ違った少女(16)が、踏切内で立ち止まった。一度は通り過ぎたが、踏切の外側にかばんが置いてあるのに気付き、嫌な予感がした。
「ずっと無表情で、とにかく様子が変だった」と小池さんは振り返る。
警報音が鳴り出し、遮断機が下りた後も少女は動かなかった。踏切の幅は約15メートル。小池さんは慌てて中に入り、少女の手を引っ張った。大久保駅に近づいてくる電車のライトが東の方に小さく見えたが、恐怖心はなかったという。
「人通りが少ない場所だったし、自分が助けるしかないと思い、とっさに体が動いた」と話す。
少女は抵抗し、踏切に戻ろうとした。小池さんは体を押さえ「そんなことしたらあかんやろ」と制止した。電車が通過し、少女は一命を取り留めた。
「なんでこんなことしたん?」。尋ねると、少女は家族とトラブルになり、自サツを考えたことを打ち明けた。一部始終を遠くから見ていた人が「カップルのけんか」と勘違いし、110番通報していた。
近くの交番に連れて行こうとしたとき、偶然パトカーが通りかかり、少女を引き渡した。たまたま踏切を通ってから約15分。少女は少し落ち着いた様子だったという。
帰宅後、明石署からお礼と事後報告の電話を受けた。「女の子が死ななくてよかった」。改めて安どした。
平本和久明石署長から表彰状を受け取った小池さんは、「人助けをしたというより、当たり前のことをした感覚。命を救えて本当にうれしい」とはにかんだ。