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『怒り新党』は2012年3月に『ギャラクシー賞』月間賞を獲得したほか、2013年~2015年には、1月1日の『芸能人格付けチェック』、2日の『とんねるずのスポーツ王は俺だ』、3日の『怒り新党』と並ぶ“正月三が日特番”に起用されたテレビ朝日が誇る看板番組。昨年3月の夏目三久さん卒業という転機があったとは言え、いまだファンの多い番組です。
番組終了の理由は、「ひと通りのことを怒り尽くしたから」とされていますが、実際はそれだけではないでしょう。主に以下3つの背景が考えられます。
◆コア層をつかむ後半コーナーの行き詰まり
1つ目の背景は、後半コーナーの行き詰まり。同番組は2部構成で、当初は前半に「国民から寄せられた怒り」、後半に「新三大〇〇調査会」が放送され、両輪として前者が女性中心のライト層、後者が男性中心のコア層をつかんでいました。
しかし、現場のディレクターたちは後半コーナー「新三大〇〇調査会」のネタ選びに相当苦労していたのです。私は過去に同コーナーの有識者を担当したことがあり、その後も5人のディレクターさんから何度もネタ提供を求められてきました。ところが3~7案を繰り返し出しても「ただ面白いだけではダメ」で採用されないなど、基準が厳しかったのです。
苦労しながら放送しているうちにネタの幅が狭くなり、『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)を超えるニッチなものばかりになったことで、かつてのような視聴者の熱狂がなくなってしまいました。
つづく
NEWS ポストセブン 3/11(土) 7:00配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170311-00000004-pseven-ent&p=1
◆怒りと毒舌は番組もタレントも飽和状態
2つ目の背景は、怒りや毒舌をベースにした番組とタレントが増えすぎたこと。
『バイキング』(フジテレビ系)、『好きか嫌いか言う時間』(TBS系)などの怒りや毒舌をベースにした番組が増えた上に、『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)が「怒ってます企画」を連発するなど他の番組にもその傾向が見られます。
それらの番組には、坂上忍さん、梅沢富美雄さん、高嶋ちさ子さん、遥洋子さん、フィフィさんらが出演し、怒りや毒舌を全開。そこに、水道橋博士さん、小藪一豊さん、おぎやはぎ、カンニング竹山さんら怒りや毒舌のキャラとして知られる芸人が加わって盛り上げるなど、タレントも飽和状態なのです。
このような怒りや毒舌をベースにした対立の構図に、視聴者はすっかり慣れてしまいました。今や『怒り新党』はマイルドな部類に入るほどで、怒りや毒舌の鋭さは感じません。それだけに、新番組『かりそめ天国』を真逆のふわっとしたコンセプトに振り切ったのは納得です。
◆マツコと有吉が次のステージへ
3つ目の背景は、マツコさんと有吉さんの変化。『怒り新党』がスタートしたころとは異なり、現在の2人はゴールデンタイムの番組を担うトップMCになりました。
その多くが大スポンサーを抱える番組だけに、「不用意な発言で迷惑をかける」ことだけは避けたいところ。特に生活情報を扱う『有吉ゼミ』(日本テレビ系)や『マツコの知らない世界』(TBS系)では、怒りや毒舌を見せる機会が減っています。また、『夜の巷を徘徊する』(テレビ朝日系)や『有吉くんの正直さんぽ』(フジテレビ系)などの一般人と絡む番組が増えているのも、理由のひとつと言えるでしょう。
つづく